食事法 各論

2019年07月17日

3-1 酢の功罪

 私は、いまから40年ほど前と、16年ほど前に食養法を集中して勉強した。多くの指導者たちの本をていねいに読んだ。それをいま思い出してみると、酢についてはほとんど書かれていなかった。食養法では酢は中心的な食材ではない。ところが、いま、菜食系の食事に関心のある人のなかに、酢をひんぱんにとっている人がいる。そのなかには酢で体を冷し病気になった人もいる。

 つぎは、60代の男性Aと私との会話である。
  A「腰が痛いのだが」
  私「腰痛は冷えからくるが果物とか酢をとりすぎていませんか」
  A「酢の物を毎日食べている」

 こういった例は私の周囲だけでもけっこうある。腰痛の人、めまいの人、貧血ぎみの人、生理のとまった人、心筋梗塞の人など。これらが酢が主因と断定できるわけではないが、酢を多めにとっていたのは事実である。

 ある医者は、ドロドロ血液をサラサラ血液にするのに、即効性が一番高い食材は酢だと実験結果を示していた。
 酢が効果が高いなら使い方を誤ると大変である。

 酢の性質に関しては小橋規實男(食養家)の説明が分かりやすい。
「……お酢も陰性の強いものです。和食にお酢はつきもので、昔から日本人は料理に取り入れてきました。使い方を調べてみると、カニ、エビ、カイの料理に使っていたことがわかります。どれもが固いタンバク質なので消化吸収が悪い。そこで、タンパク質を分解する力のあるお酢を使ったわけです。しかし、酢だけでは陰性が強く危険性があるので陽性の醤油と混ぜて酢醤油にして使っているのです。逆に、このような理にかなった使い方ではなく、単純にお酢が身体にいいと考えて酢飲み健康法などを行うのは賢明とは言えません」(『気を高める陰陽食事健康法』『現代人を救う「気」を高める食事法』) 

 酢は、酢飲み健康法だけでなく、酢大豆のように他の食材と組み合わせたものが勧められている。しかし、酢大豆についていえば、酢も大豆も陰性食品で、取りすぎては体を冷やす。

(参考)
 酢の使用頻度について、細野雅裕(食養家)は次のように書いている。
「要は、酢を使用する回数を、自分の日頃の食事内容と、体質とを考えて決めてほしいのです。簡単な目安としては、健康体で週二回くらいがよいと思われます。頬(ほほ)や鼻などに毛細血管の浮き出ている人、目が充血しやすい人、貧血、冷え性、糖尿病などの人には、しばらく体質が改善されるまで、酢は用いない方がよいでしょう」(『東洋の知的健康法』)



kenko7007 at 11:50|PermalinkComments(0)

2019年07月16日

3-2 果物は体を冷やす

 果物は体を冷やす性質が強い。いま、日本ではたくさんの果物が年中食べられている。私は多くの人を冷え症にした第一の食べ物は果物だと思っている。

 私がからんだ2つの実話を紹介しておこう。

 まず、A(70代女性)との会話である。
  A「これから妹(B)の見舞いを行くが果物をもっていく(バナナを示して)」
  私「ダメですよ。妹さんの病気に体を冷やす果物は厳禁ですよ」
  A「そういえばそうでしたね。ではこのバナナはあなたにあげます」
 私は、以前からBの病名などは聞いていた。 

 つぎは、私の相談相手の栄養士Mとの会話である。
  私「友人の奥さんがめまいですがワンポイントアドバイスをおねがいします」
  M「トマトやナスの取りすぎに注意してください」
 Mも私も食養の専門家である。二人ともめまいは冷え症の人に多く、果物の取りすぎはよくないと知っている。それを前提にしての会話である。Mは「果物はもちろ ん」を省略してトマト、ナスといったのだ。トマトやナスは果物と同じくらい体を冷やすが、それで冷え症になっている人が多いようだ。

 果物についての格言を紹介しておこう。
 日本の格言から
 「なり木のある家は病人が絶えない」
 「イチジクの木を植えると死に絶える」
 「秋ナスは嫁に食わすな」(嫁の体を冷やすから)

 肉食の多い欧米の格言から
 「食後の果物は黄金の値打ちがある」(果物は陽性食品の肉食の害を消すから)

 森下敬一(医師)の一文も紹介しておく。
「果物は、成分組成の特性によって、生野菜の作用を強調した姿で現わす。したがって、陰性体質者は極力控え、陽性体質者は多めに摂ってよい」(『クスリをいっさい使わないで、ガンを防ぎ、治す本』)

(参考)
1.あるリウマチ患者は食養指導者から「果物は一日にあなたのげんこつ一個ほどにしてください」と言われた。私は、冷え気味の人はこの位の量にとどめ、それ以外の人はもう少し多めでもよいかと思っている。
2.果物に塩をつけて食べると冷え防止になる。「醤油をつけて」という指導者もいる。



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2019年07月15日

3-3 大豆は万能ではない

 若杉友子(食養指導者)の本をみていたら「大豆と大豆製品は体によくない!」とあった。もっとも食べ過ぎはよくないという意味だが(『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食生活』)。
 10年ほど前の私なら、これを見たら「何で」と思っただろう。しかし、その後、冷え症から病気になった人にたくさん出会い、冷え症の原因をてっていして調べているうちに大豆・大豆製品(みそ・しょうゆを除く)の取りすぎも病気の原因になることを知った。大豆は陰性食品である。大豆も万能ではない。

 私の出会った事例を紹介しておこう。
1.ある50代の女性は豆腐と豆乳を毎日とっていた。そのためか玄米食なのに冷え症だという。ある年、重いカゼをひいた。通常、玄米食者のカゼは軽い。
2.ある60代の女性は大豆の煮豆を意識して食べている、と聞いていた。それなのに重病になった。私は「なぜ」と思ったが、体が冷えていたせいもあったのか。
3.ある60代の男性は腰痛だった。かれは毎日豆乳をたくさん飲んでいた。

 どうして大豆・大豆製品をたくさん食べる人がいるのか。マスコミから流れてくる「大豆はタンパク質が豊富」「イソフラボンが取れる」「大豆タンパクをとると筋肉がつく」といった情報のためかと思う。
 ここで、私があとの2つについてコメントはできない。しっかり勉強していないから。でも、それを肯定しても大豆・大豆製品を取りすぎてはいけないのである。陰性食品だから。

 小倉重成(医師)は次のように書いている。
「大豆は良質の蛋白源なので大豆そのものを一勺(しゃく)摂るだけで十分である。豆腐類、納豆、湯葉などの加工品は何故か永く食べると貧血を起こすので、なるべく控え目にする」(一勺は10の1合、『自然治癒力を活かせ』)

 では、大豆・大豆製品はどのくらい食べるべきなのか。
 私は2-1の(参考)で森下敬一(医師)が1週間分の献立を示していると紹介した(『クスリをいっさい使わないで病気を治す本』三笠書房の知的生きかた文庫)。ここには、3週間分の食事(1日昼食、夕食の2食、計42食)のメニューがでている。それによると、大豆製品(豆腐、納豆、ゆば、大豆もやし)は計7回で、食卓に上がるのは3日(6食)に1回である。ひとつの参考になるかと思う。



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2019年07月11日

3-4 塩分はしっかりと

 私は、数年前、減塩に熱心なのに、めまい、喘息などをもつ50代の男性に出会った。私はその原因は減塩だと確信し、すぐに塩分に関する諸資料を提供した。

 最近の2つの統計によると、減塩に関心のある人は75%前後だった。私が食養法の勉強をはじめた1976年頃には「減塩」は庶民のなかにはなかった。その後、塩分は高血圧の原因とされ、いまではすべての慢性病の原因にされてしまった。

 減塩がよいのか否か。私は答えは簡単にみつかると思っている。それは、減塩の人と塩分をしっかりとっている人に会い、健康状態をみればよいのだ。

 医師と食養家の観察結果を紹介しよう。

・石井仁平(医師)
「夜、救急当直をしていると、めまいや吐き気、両手のしびれや息苦しさ、そして、とりとめもない不安を訴えてくる人は多い。たいてい色白で筋力のなさそうなご婦人だ。……こうした人に、「塩分をひかえているでしょう?」と尋ねると、血圧が高めに出ることがあるので、塩分をひかえている、と答える人は少なくない」(村上譲顕『日本人には塩が足りない』所収)

・中嶋孝司(食養家)
「私が取材した例では、過度の減塩で難病に苦しんでいる人、不妊症になった人……毎夏日射病で倒れる人、花粉症になった人、勉強嫌いになった大学生、スポーツ選手から脱落した人、怠け病で寝たり起きたりの農家の主婦など、その弊害は慄然とするものばかりでした」(『誤食の恐怖』)

 減塩が広がった理由は幾つかあるが、その一つは欧米の減塩思想が、そのまま日本に持ち込まれたことである。しかし、ナトリウムを多く含む肉を食べる人は塩分(塩化ナトリウムが主成分)は相対的に少なくて済む。いっぽう、カリウムの多い穀物・野菜を食べる人は塩分が必要となる。日本人の多くは後者である。

 菜食系の野性動物が塩をもとめる映像はよくテレビに出てくる。ある塩分の多い小さい沼に多くの動物がやってくる。菜食の鹿などは、ここで水を飲んで塩分をとる。いっぽう肉食動物は塩分のある水は飲まないが、沼にくる菜食動物を捕まえるために来ている。塩分は獲物の内臓や肉からとれるから。

 塩分の量に関し若杉友子(食養家)は「塩味はきちんと感じるぐらい使ってよい」と書いている(『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食生活』)。

 なお、私がすすめる塩は自然塩(海水塩、岩塩)で、精製塩(化学塩)ではない。自然塩は60種類ものミネラルが含まれているが、精製塩は塩化ナトリウム99%である。

(参考)塩と高血圧の関係について研究した元名古屋市立大学教授の青木久三(医師、1933~?)は、血圧と食塩摂取はほとんど関係がなく、減塩で血圧が下がるのは、ある種の腎臓病の人のみだとしている。



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2019年07月09日

3-5 水分はほどほどに

 10年ほど前のことだが、友人(60代男性)が「水分を取りすぎてひどい目にあった」といってきた。かなり体調をくずしたようだ。それ以降、私は縁のあった人には、食事以外の水分摂取は一日上限1.5ℓと伝えている。

「水分不足にならないように」とテレビから聞こえてくる。血液がサラサラになるように、熱中症にならならいように、といったことである。これくらいならよいのだが、「一日2ℓの水分を取れ」と健康雑誌の広告などから見えてくる。
 私は、これまで、一日に飲む水の量をほとんど意識したことはない。おおむね、お腹がすくから食べるように、のどがかわくから飲むだけだ。
 一日2ℓは、食事以外で取れということだ。適当なのだろうか。

 人の一日に必要な水分量は定説化している。体に入る水分は、水分の摂取で約1~1.5ℓ、食物中の水分から約0.8ℓ、体内で作られる水分約0.3ℓである(石原結實『「水分の摂りすぎ」は今すぐやめなさい』)。
 私はこれをみて、食事以外でとる水分はずいぶん多いと思ってきた。人間は体毛がないせいだろうか。それなのに、なお、一日2ℓを取れという人がいるのだ。

 水分を多めに取るとどうなるか。二人の見解を紹介しておこう。

・千坂諭紀夫(食養家)
「……必要以上の水を飲めば飲むほど、赤血球は薄くなっていくのです。……赤血球が減ると、ヘモグロビンの数値も下がり、酸素を運ぶ血液の力が弱くなってしまいます。医学的には、ヘモグロビンが低すぎると貧血と診断されます」(『「血液のチカラ」が病気を治す!』)

・石原結實(医師)
「血液を汚す原因のひとつに「冷え」がある……冷えを引き起こす最大の理由は「水分の摂りすぎ」である。現代人は体を動かして汗を流す機会も少ないのに、やたらと水分を摂る。……「たかがジュース」「たかがお茶」などと侮(あなど)らず、アルコールの飲み過ぎに注意するように、コーヒー、お茶、清涼飲料水も飲みすぎには注意したい」(『イシハラ式家庭の医学』)

(参考)甲田医師がすすめる水分量
 甲田光雄(1924~2008)は、やや独自の食事療法で多くの難病を治した医師である。ネット上に甲田が一日2ℓを勧めていたとあったので本を見た。たしかに1.5~2ℓを勧めていた。しかし、前提があった。それは「半日断食を行うと、食事からとる水分が少なくなるため、生水や柿の葉茶で水分を多くとる」ということだ(『奇跡が起こる半日断食』36~37頁)。半日断食とは朝食を抜く1日2食の玄米菜食で、間食や夜食はいっさい禁止である。食事からとれる水分が少ないから飲料水を多くするということで、一般の人に1.5~2ℓを勧めたわけではない。



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